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裁判内容

  

第五 争点に対する当裁判所の判断

 

一 事実の認定


証拠(甲1から7、乙1、4、乙6の1、2、乙7、検乙1の1、証人AA、原告代表者)並びに弁論の全趣旨によると次の事実を認めることができる。      

1 本件ホテルの所在地は国道一七一号線沿いの周りには農地が広がる場所であり、その付近には名神高速道路大山崎インターチェンジの建設が予定されている。  

2 第一届出書に添付された地階及び一・二階平面図(別紙図面(1)及び(2)では、建物は地下一階、地上二階の建物で、一階に一三室、二階に二二室設置された客室に対して各階二個の合計二二個の階段が設置され、客は四部屋を除く四○室の客室には、地下階の駐車場から二部屋に通じる各階段を上り、階段の踊り場に設置されたドアーからフロントを介さず直接に各部屋に入ることができる構造になっていた。なお、図面上各階段は二部屋の客室に通じており、客室への専用階段とはいえない。

3 本件届出書に添付された地階及び一・二階平面図(別紙図面目及ぴ4)によれば本件ホテルは地下一階、地上二階の建物で、以下のような構造及び設備を有するものである。  (一)地階は車庫であり、階段が4箇所設置されているが、そのうちフロント の前を通らずに一階の共用廊下に行くことができる階段は西側に設置された階段(以下「西側階段」という。)のみである。右階段には、客室に直接出入をすることができるドアーは設置されていない。  

  (一)
地階の車庫は二五個のスペースに区分され、各車庫には各二台の自動車が収納可能で、全体で五○台を収容することができる。車庫の入り口の幅には広狭二種類のものがあり、広いほうは約七・五から七・七メートル、狭いほうは約五・五メートルある。広いほうの車庫には二台駐車しても西側階段と同一の階段を設置することができるだけのスペースがある。各車庫の間は耐力壁で仕切られている。  

 (二)

一階には、受付カウンターのあるフロント、喫茶ルーム、厨房が各一か所、玄関が二か所(うち一つの玄関には玄関ホールが設けられている。)客室が二四室設置されている。  一階客室への通路としては、東側の三か所の階段を利用した場合、玄関のフロント前から各室に通じる共用廊下を利用することになり、西側階段を利用した場合は階段出口から共用廊下を利用して客室に至る。
 

 (三)

二階には食堂、厨房、会議室が各一か所、客室が二四室設置されており、各客室には共用の廊下を利用して入室することになる。  二階にはフロント付近に降りる東階段の外、一階に降りる西側階段及び建物中央付近に設置された計三つの階段が設置されている。  

 (四)

一、二階には間口二・七メートル、奥行八メートルの区画が各階一○か所計二○か所あり、そのうち一二か所がリネン室に、六か所が物入れに、二か所が建物屋外部分となっている。なお、右区画部分を改造すれば第一届出書に添付された各階平面図面表記の階段に作り替えることが可能である。  

 (五)

 客室の面積は平均で約四六平方メートルで、全室二人部屋であり、一人部屋はなく、収容人員は約一○○名である。各室にはベッドが二つ設置される予定であり、洗面化粧台を除いて壁、天井などに鏡はない。  

 (六)

 原告は第一届出書による届出以降本件処分に至るまで数回にわたる行政指導を受けたが、確約書(甲1添付)を提出したり、階段の数を減らすなど、構造、施設に関しては一定の範囲で行政指導に従った変更を行ってきた(平成七年三月六日付の図面では地階、一階及び二階に通じる階段の数は合計七か所であったが、各階段と各客室との位置等に変更を加えるなどした。)。  被告が本件処分をした理由は、本件ホテルのリネン室などの部分を階段に改造することが容易であり建物全体としてみれば、本件ホテルは地階車庫から階段を通って直接に一、ニ階の客室に出入りできる構造であるから、風営法施行令三条二項三号の構造を有する施設に該当するという点にある。

 (七)

 本件ホテルの建物の敷地は、A が所有していたところ、平成五年九月二二日相続を登記原因としてB 外 五名の共有とする旨の所有権移転登記がされ、さらには右 A らから旅館業を営む第三者に対し平成八年四月一八日に同日付け売買予約を登記原因とする共有者持分全部移転請求権仮登記がされている。

 

ニ  ラブホテルに関する法規制の概要

 
先に掲記したラブホテルに関する法規制の概要を整理すると、京都府乙訓郡大山崎町においてラブホテルとしてその建築に町長(被告)の同意を要するラブホテルとは、
(一)専ら異性を同伴する客の宿泊、体憩の用に供するもので、
(二)その食堂又はロビーの床面積が一定の面積以下のもので、
(三)
(1)客の使用する車庫天井が通常その客の宿泊に供される個室に接続する構造を有するか、
(2)客の 使用する自動車の車庫が通常その客の宿泊に供される個室に近接して設けられ当該個室が当該車庫に面する外壁面に出入口を有するか、
(3)客の宿泊する個室がその客の使用する自動車の車庫と当該個室との通路に主として用いられる廊下、階段その他の施設に通じる出入口を有するもの、
以上の(1)から(3)のいずれかの構造を有するもので、
(4)本件条例施行規則二条に定める構造及び設備を有しないものということになる。これら(1)から(4)のすべての要件を満たしたときは、その建築に町長(被告)の同意を要することになる。  

三 判断

 

1 本件条例のラブホテルの該当性について

  

(一)風営法について

 
 まず、本件ホテルが、専ら異性を同伴する客の宿泊、体憩の用に供する施設であるかどうかについて判断する。  風営法は善良な風俗と清浄な風俗環境を保持し、少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため風俗営業及ぴ風俗関連営業について営業時間、営業区域等を制限し、風俗営業の健全化に資するためその業務の適正化を促進する等の措置を講じることを目的とする法律(同法一条)であり専ら異性を同伴する客の宿泊、体憩の用に供する施設が風俗関連営業とされるのは、かかる施設がしばしば道徳上好ましくない者の密やかな性交渉の場として用いられ、それが清浄な風俗環境を害することを阻止するために一定の枠をはめようとの意図に出たものと考えられる。

 ところで、風営法二条四項三号の規定は、(一)専ら異性を同伴する客の宿泊、体憩の用に供する施設で、(二)政令で定める施設を設けるものという二つの概念に分析することができるが、前者は顧客が施設を利用する目的により定義づけしようとするもので、日常用語でいうラブホテルの概念に近く、その判断は、本件届出書の添付図面から判断される建物の構造、設備、その立地場所、本件届出に至る経緯など諸般の事情を総合して判断すべきである。  

これを本件でみると、@本件ホテルの建物は四八室全部が二人部屋であって一人用の部屋はないこと、A建築予定地は、国道に面し、近々界隈に名神高速道路のインターチェンジが開設される予定のところにあって、四八室に対し五○台の自動車を収容する車庫を備えるもので、専ら自動車による顧客を想定していること、G第一届出書にかかる設計図面(別紙図面(一)及ぴ(二)では二室に一つの階段が設けられるなど、他人の目を避けたいと望む顧客の二−ズに沿うよう設計されていることはいずれも前判示のとおりであるから、本件ホテルは専ら異性を同伴する顧客の宿泊、休憩のための施設と認めるのほかはない。  この点、原告は本件ホテルをビジネスホテルとするつもりであったと供述するが、到底信用することができない。  

 

(二)施行令該当性について

 

風営法は右に加えて「政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業」という絞りをかけ、これを受けて風営法施行令三条二項が前記のとおり三通りの定めをしているが、本件において被告は本件ホテルが、「客の宿泊する個室がその客の使用する自動車の車庫と当該個室との通路に主として用いられる廊下、階段その他の施設(当該施設の内部を外部から容易に見通すことができるものは除く。)に通じる出入口を有するもの」に該当すると主張するので、以下この点について判断する。

 ところで、風営法が異性を専ら同伴する客の宿泊等の用に供する施設の要件に、政令で定める構造又は設備を有するものという要件を付加した趣旨は、施設の利用目的という基準だけでは、警察的規制を加える基準としては抽象的で不明確であることから、その該当性判断が恣意的に流れることを防止するため、ラブホテルの通常有する特徴的な構造又は設備を政令で列挙することで客観的な判断を担保し、もって行き過ぎた規制がされないように配慮したものと考えられる。

 そこで、風営法施行令三条二項三号の要件の意義であるが、これはモーテルやラブホテルの利用者は他人と顔を合わせたくないという心理があるため、これらの施設が車庫から個室まで他人と会わないで行くことができる構造となっていることが多いことに鑑み、そのような構造の施設を規制対象にしたものと考えられる。そして、右にいう「通路に主として用いられる」施設には、専用の通路のほか、客の共用に供せられる部分が含まれていても、その共用部分が少ないものも含まれると考えるのが正当である。

 そこで検討するに、本件ホテルには地下階車庫から客室に通じる階段は四か所に存在するのみであり、しかもそれらはいずれも共用の階段であるし、客室に通じる廊下もまた共用の廊下であって、各客室の各専用のものはないことは前判示のとおりである。
してみると、本件ホテルが「客の宿泊する個室がその客の使用する自動車の車庫と当該個室との通路に主として用いられる廊下、階段、その他の施設に通じる出入口を有する構造」を有する施設には該当しないというほかない。

 ところで、被告は本件ホテルはリネン室などの部分を階段に改造すれば容易に別紙図面(一)及び(二)表示の建物と同様の構造に変更し、専用階段にすることができるとして、政令所定の構造を有する建物に該当すると主張している。

 確かに、第一届出書にかかる建物における客室二室について車庫との間に階段一個が存在し、これらは共用階段とはいえ共用者が二組の客にすぎないことから、「客の宿泊する個室がその客の使用する自動車の車庫と当該個室との通路に主として用いられる・・・階段・・・に通じる出入口を有する構造」を有する施設に該当する余地がないではない(ただ、その場合でも、第一届出書にかかる建物の本件条例施行規則二条五号該当性を肯定するのは困難である。)が、将来における不確定な事実予測をもとに本件届出の受理の是非を決定するのは相当でなく、別紙図面(一)及び(二)と別紙図面(三)及び(四)の図面を実質的に同視することはできないから、被告のこの点の主張も採用しない。  

(三) 本件条例施行規則の該当性について

 

被告は、本件ホテルが本件条例施行規則二条五号に定める「帳場、フロント等から、各客室に通じる供用の廊下、階段、昇降機等の施設」を欠く旨主張するので、この点を判断する(なお、右に「供用」とあるが文脈等からしてこれは「共用」の趣旨と理解するのが正当である。)。

右規定の趣旨は、フロントなどホテルの側からみて各客室に共用の廊下等で通じる構造を有さない施設、すなわちホテル従業員の目を避けるような構造を有する建物はラブホテルに当たるとする趣旨と考えられるが、前判示のとおり本件ホテルは、フロントと各客室の出入口とは共用の廊下、階段により通じているから、被告の主張は理由がないといわなければならない。  

2 本件処分の無効確認請求について  


以上のとおり、本件ホテルは本件条例二条二号のラブホテルに該当しないから、同条例三条二項に定める町長(被告)の同意を要するものではないから、これを求める申請のなかったことを理由に本件届出を受理しなかった本件処分は本件条例の解釈を誤った違法無効のものというほかない。  

3 本件届出の受理確認請求について  


本件届出の受理確認請求にかかる訴えは、本件処分の無効確認を求める訴えが認容されたことによりその目的を達することができたものというべきであり、本件処分の無効確認請求と併せて司法的判断を必要とするものではないから、無名抗告訴訟にはあたらず、不適法である。

 

第五 結論

 

以上の次第で、原告の本件処分の無効の確認を求める請求は理由があるからこれを認容し、その余の請求にかかる訴えは不適法であるから却下することとして、主文のとおり判決する。                 
   (口頭弁論終結日平成一○年四月二二日)